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prologue

 まだ昼下がりだというのに、空は暗い。
 強い秋雨に煙る広い庭に、一人の少年と女の死体があった。少年の手には小型の銃が握られ、硝煙を上げている――女はそれによって殺されたのだろう。彼は無表情で死体を見つめている。
「貴方は」
ぽつりと呟く声には何の感情もない。濡れた黒髪が覆う顔は、雨に温度を奪われて青ざめていた。その頬を雫が滴る。真紅の輝きを持つ瞳は瞬きもしていない。
「貴方は、どうして」
言葉を切り、少年は警戒の色を顔に浮かべた。背後から近付く小さな水音。それは、誰かがこちらに駆けてくる音だった。
振り向いて、しかし身構える前に彼は警戒を緩めた。近づいてくる少女のことは知っている。ただし、直接会うのは初めてだった。
――彼の双子の姉。そして、彼が殺した女の娘。
「母さん!」
黙っている彼の側をすり抜け、少女は死体に取り縋った。彼はそれを何も言わず見つめている。少女のすすり泣く声も、彼には聞こえていないかのようだった。
彼は独り言を続ける。
「……どうして、『母さん』は」
少年は呟いた。

「笑っていたのだろう……」

少女と死体から視線を外し、暗い空を見上げて軽く首を横に振る。――わからない、というように。
姉と死体をそのままに、彼はその場を静かに立ち去った。

――彼がその問いの答えを得るのは、実にそれから十二年の後であった。